[尾下研究室][研究テーマ] | [English] |
少数の粒子による動力学シミュレーション | 既存の曲面生成手法(PN Triangles)を用いて生成された衣服の表面形状 | 提案手法によって、人体とのめり込み回避やしわなど変形が適用された衣服の表面形状 |
現在、衣服の動力学シミュレーションのための主なアプローチとして、粒子モデルによる手法が一般的に用いられている。粒子モデルによる手法では、衣服を細かい粒子の集まりとしてモデル化し、動力学シミュレーションによって粒子の運動を計算する。しかし、衣服のしわなど細部の振る舞いを実現するためには1つの衣服につき数千〜数十万個程度の大量の粒子が必要になると言われており、比較的高速な手法を用いた場合でも、1フレーム分の衣服の動きの計算に数秒程度の時間がかかる。そのため、既存の手法をそのまま適用するだけではリアルタイムでの衣服シミュレーションは困難である。
本研究では、粒子モデルによる動力学シミュレーションと幾何的な曲面制御手法の組み合わせることになって、衣服の自然なアニメーションを高速に生成する。本手法では、まず、最小限の粒子のみを用いて動力学シミュレーションを行い、衣服のおおまかな動きを計算する。その後、計算された粒子の位置をもとに、幾何学的な曲面生成手法を用いることで、最終的な衣服の表面形状を生成する。この時、衣服の下の人体形状に合わせて衣服の表面形状を変形する。また、衣服の表面に働く力を分析することによって衣服のしわなどの細部の形状変化を計算する。このような幾何学的な処理を適用することによって、衣服の自然な表面形状を高速に生成することができる。
また、実時間衣服シミュレーションの具体的なアプリケーションとして、仮想試着システムのプロトタイプを開発した。仮想試着システムは、利用者の動きをモーションキャプチャ機器で取り込み、衣服のシミュレーションを行ってリアルタイムにスクリーンに映し出すことで、利用者が仮想空間内でさまざまな衣服を試着することができるようなシステムである。