[尾下研究室][研究テーマ] [English]



能の仕舞のアニメーション合成システムの開発

Easy-To-Use Authoring System for Noh (Japanese Traditional) Dance Animation



開発したシステムのスクリーンショット

[mp4 (25.7 MB)] demo video (mp4)
能は日本の伝統的な演劇形態の一つである。他の舞踊(ダンス)と同様、能の仕舞は、所作と呼ばれる基本的な短い動作により構成される。仕舞は、型付と呼ばれる資料において、どの所作をどのタイミングで行うかという記述によって記録されている。すなわち、約300種類ほど存在する各所作に対応する短い動作データ(モーションキャプチャデータ)があらかじめ用意されていれば、型付に従って所作の動作データを組み合わせることで、仕舞のアニメーションを制作することが可能である。しかしながら、そのような動作編集作業を従来のアニメーションシステムを使って行うためには、専門的な知識や多くの作業時間が必要であり、能の研究者・学習者・愛好者などのアニメーション制作の専門家でない人達がそのようなアニメーション制作を行うことは困難であった。

そこで我々は、誰でも簡単に、所作の動作データを組み合わせて仕舞のアニメーションを制作することができるシステムを開発した。容易な動作編集を実現するために、筆者が以前に開発した自動合成技術を利用する。本技術の特徴は、入力動作データにおける足と地面の間の制約条件を保つように、出力動作の各区間における動作ブレンディングの方法・区間を決定することである。本技術は、基本的には任意の種類の動作に適用可能な手法であるが、本研究では、すり足などの能の独特の動作にも問題なく適用できるように、足と地面の間の制約条件の判定手法や体の向きの判定手法などの改良を行った。

本研究では、所作を所作(型)と所作(歩行)の2種類に分類して扱う。所作(型)は、基本的に動作の型が決まっており、固定の動作データ(モーションキャプチャデータ)として表わすことのできる所作である。一方、所作(歩行)は、型付に記述された目標位置・方向などの情報にもとづいて、能舞台の上をある軌道に沿って歩行するような所作である。所作(歩行)では、歩行軌道・動作は状況により異なるため、あらかじめ動作データを用意しておくことはできない。そこで、利用者が入力した歩行軌道に応じて動的に歩行動作を生成する機能を開発した。

開発したシステムの実験・評価のために、実際にいくつかの仕舞のアニメーションを作成し、仕舞全体のモーションキャプチャデータとの比較・検証を行った。また、能の演技の稽古をしている学習者にシステムを使ってもらい、ユーザテストを行った。これらの実験・評価によって分かった本システムの有用性、及び、問題や課題についても報告する。


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